美しく、やさしく、琴が描く日本のうた
琴の音色には、古くから日本人の心に寄り添い続けてきた“静かな情緒”があります。春を告げる風、夕暮れに染まる山里の景色、学校帰りに口ずさんだ童謡、家で聞こえてきた母や祖父母の歌声…。それらは特別な出来事でなくとも、日本人なら誰もが胸の奥に持っている“原風景”といえるでしょう。このCDボックスには、琴の名手・山内喜美子をはじめとする演奏家たちが、「赤とんぼ」「ふるさと」「浜辺の歌」「宵待草」など、長く歌い継がれてきた日本の名曲を丁寧に奏でています。琴、尺八、三味線、オーケストラが響き合うことで、歌詞がなくても豊かな情景が立ち上がり、聴くほどに心が澄み渡っていくようなひとときが広がります。また、「襟裳岬」「女のみち」「なみだ恋」など、昭和の歌謡曲を琴で味わえるのも魅力のひとつです。かつてテレビやラジオから流れてきた歌が、和の音色をまとって新しい表情を見せ、日本生まれの音楽文化の奥行きをあらためて感じさせてくれます。ゆっくり耳を澄ませば、日本に生まれ育った自分の歩みや、大切な人との思い出が自然とよみがえり、心が穏やかに満たされていくような全120曲。琴が描く日本の情景とともに、深い余韻にほどけていくような時間をどうぞお楽しみください。
